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スペイン風順番の待ち方を学んだ話 - SPAIN -

No.516/2020.12
経営企画部/ 吉田 明正
画:クロイワ カズ

スペインのカステジョに5年間駐在し、今年7月に帰国しました。カステジョは、東を地中海に面した、人口60万ほどの風光明媚な県です。

赴任後3ヵ月ほどして、海外駐在員向け通販会社に頼んであった日本食品や本などの荷物が現地の郵便局に届いたとの連絡で、所定の郵便局に出かけました。局に入ると10人ほどが中で順番を待っていました。入口には日本と同じようにボタンを押すと順番札の出る機械が──。が、私が押しても何も出てきません。困った顔で、待っている人の方を見ると、中の1人が肩をすぼめて「ファルタ」と言っているようです。スペイン語は未だ初級で、多分「故障している」という意味だろうと想像しました。が、そうなると自分は誰の次なのかが分かりません。日本のように行列しているわけでもなく、座っている人、立ってお喋りしている人、思い思いの姿勢で待っています。暫く様子を見ることにしました。1人が終わると、次の人がすぐに進み出ます。自分の前が誰かを憶えているのでしょう。どうしてそれが分かるのか不思議でした。そのうちに、新しい人が入ってきました。その人が大きな声で何か尋ねると、待っている中の1人が手を挙げました。「ウルティモ?」という単語が耳に残りました。「誰が最後か?」と訊いたものと思われます。これで自信がつきました。私は、入ってきたばかりの男のところに行き、その人に近づいて、「トゥ(あなた)」と言いながら相手に指をさし、返す指で私をさし、「ジョ(私)」と言いました。「あなたの次が私ね」と言った積りです。相手は「ヴァレ(分かった)」と答えてくれました。

そうして、その人の次に無事荷物を受け取り、気分上々、郵便局を後にしました。