MENU

アメリカはハンディキャップ大国という話 - U.S.A. -

No.398/2011.02
宇部興産機械(株)/ 米原 淳一
画:クロイワ カズ

アメリカ駐在時代、子供にせがまれてトイザらスでよく買物をしました。スクールバスのおもちゃを買ったときのこと。

アメリカのスクールバスは規格化されていて、全国どこでも同じデザインの黄色いバスです。おもちゃのバスもそっくり同じデザイン。なかなか精巧に出来ていて、屋根を開けると本物そっくりの座席が並び、そこには、人形の乗客が座っています。感心したのは人形の顔。白人、黒人、アジア系、ヒスパニック系と平等に配置してありました。

半年後、スクールバスの新型が売り出されたというので買い求めました。今度のバスは後の扉が開くようになっていて、そこを車椅子の乗客がスロープ伝いに乗車できるようになっているのです。

数日後、近くのトレーニング・ジムのプールで泳いでいたときのことです。私はスポーツがあまり得意ではないのですが、水泳だけは多少自信があります。そのジムでも私を抜いていくスイマーはあまり見かけませんでした。ところが、その日は違いました。隣のレーンを泳いでいた男があっという間に私を抜き去ります。こちらも意地になってピッチを上げました。が、とても敵いません。私は泳ぐのを止めて、暫く力強い泳ぎに見とれていました。2往復ほどして、その男がプールサイドに上がったとき、私は思わずアッと叫んでしまいました。両足ともヒザから下がないのです。40前後でしょうか、男はぎこちない格好ながら、平然と更衣室の方に歩いていきました。

私は彼に負けた口惜しさと同時に、「ノーマライゼーション」(障害者が健常者と同じように暮らすこと)の実態を見たように感じました。これこそが、アメリカ社会の底力なのかもしれません。