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愛車の頑張りで愛息が誕生した話 - GERMANY -

No.420/2012.12
ウベ・ヨーロッパ/ 瀬谷 基次
画:クロイワ カズ

3年前、妻と1歳になったばかりの長男を帯同してドイツに赴任しました。

昨年、妻が2人目を懐妊。当地の産院としては定評のあるカトリック系の病院で診察を受けたところ、予定日は6月15日。外地での出産なので、3週間前から禁酒を誓い、入院に必要なものを愛車に積み込んで、何時でも連れて行けるよう準備を整えました。

5月29日、会社で飲み会があり、未だ大丈夫だろうと参加。念のためお酒は控えめを心がけました。2次会は近くのカラオケ。興に乗って何曲か歌ったところで携帯に妻から電話です。

「様子が変。直ぐに帰って!」と言います。

慌てて水をガブ飲みして愛車で急遽帰宅。でも、車の調子も変です。ギヤーが上手く入りません。構わず飛ばしました。苦しそうにしている妻を乗せて病院へ急行。

予約前の入院なので手続きが大変です。しかも難解なドイツ語と英語で頭の中はパニック。午前3時に陣痛が始まり、妻は分娩室へ。後は祈るのみです。病院の玄関にあった聖母の像を思い浮かべて、ひたすら無事出産をお願いしました。

朝6時、男の児を無事出産。我が次男との対面を済ませて、一旦引き上げることにしました。ところが、帰りのアウトバーンで突然車のギヤーが動かなくなりました。アクセルを一杯に踏み込んでも40㎞しか出ません。アウトバーンで低速運転は危険ですが、非常灯を点滅させながら、何とか我が家に帰り着いたとたん、車も力尽きてダウン。後日修理に来てもらいましたが、廃車と決まりました。愛車にとっては、あの日が最後の御奉公でした。土壇場の頑張りのお陰で、ドイツ生れの次男は順調に成長しています。

本文中に飲酒運転を容認するかのような表現がありました。心よりお詫び申し上げます。