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究極のバーゲンを目撃した話 - THAILAND -

No.443/2014.11
化成品・樹脂カンパニー/ 畑中 則夫
画:クロイワ カズ

2年前の夏、バンコクの子会社に出張した時のこと。 現地のタイ人マネジャーたちとの会議が終わり、親睦を兼ね郊外レストランまで夕食に出かけることになりました。総勢15名、バン2台で出発です。女性が多いので、途中、海辺のマーケットでトイレ休憩。

海岸にはたくさんの露店が立ち並び、大勢の人が涼を求めて集まっています。私は1軒のアクセサリーの店を冷やかしていました。ふと前を見ると、女性マネジャーのSさんが黒真珠のネックレスを手にとって品定め。店員は売らんかなの構えで、さかんに話しかけています。8,000バーツ(24,000円)だけど安くすると言っているようです。Sさんは店員を一瞥すると、無言でその場を離れました。5分ほど経って私が店を出ようとした時、彼女が再び現れました。先ほどの店員が飛んできて早口で何やら話しかけます。この客は買うに違いないと踏んだのでしょう。更に安値をオファーしたようです。Sさんは今度は少し笑顔を見せたものの、何も言わずに出て行きました。

時間が近づいたので私は車に戻りました。他のメンバーはそろいましたが、Sさんの姿がありません。暫く待っていると、足早に戻ってくるのが見えました。後ろからはあの店員がネックレスを手に追いかけてきます。2人は立ち止まって話し始めました。ネゴが最終段階に来たようです。10分近く皆を待たせて、遂に商談成立。ネックレスはSさんの手に渡りました。買値は何と1,800バーツ。恐るべきバーゲニング・パワー!

Sさんの仕事は、現地会社の製品をタイ国内や日本の親会社(当社です)に販売すること。彼女のタフな交渉力を目の当たりにして、頼もしくも、怖くも感じました。当社向けの販売は少しお手柔らかに願いたいものです。