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地図が読めない運転手の話 - CHINA -

No.448/2015.04
エネルギー・環境事業部/ 末廣 哲郎
画:クロイワ カズ

2009年、北京に赴任して2年目。出張で天津に出かけました。北京—天津は高速道路を利用すると3時間ほど。前回も車で行きました。同行は通訳のH氏とベテラン運転手のI氏。I氏は北京市内なら最短距離で目的地まで行きますが、郊外に出るとダメ。地図が読めないのです。車にはナビが付いていますが、ナビ嫌いなのか「こんなもの使えない」と電源を切っています。

その日は天津市内の客先まではスイスイでしたが、帰りは恐い—。帰路、天津市内を走る間、私は後部座席でH氏と客先での面談のおさらいをしていました。私の中国語は当時まだ初級で、話が込み入ってくると理解できません。一方、H氏は込み入った話を日本語にできない。それでは仕事に差し支えるので、もっと日本語をブラッシュ・アップするようアドバイスしました。

I氏は後部座席での日本語交じりの会話が解ったのか、ニヤニヤしながら運転しています。ところが、先ほどからどうも同じところをグルグル回っているようで、高速に出られません。運転席の横には天津の地図が開いたままです。

「何時まで天津の街を見せる積もりかな?」今度はI氏にお説教です。H氏が通訳しながら、運よく高速道路への標識を見つけました。

「次の角を右だ!」と叫んで、漸く高速に乗ることができました。

その後も同じようなことが何度かありましたが、私の帰国する2012年には地図が読めるようになっていました。後、ナビを使うようになればI氏の運転も鬼に金棒でしょう。

斯く言う私は、帰国当初、右ハンドル車に馴染めず、複雑な都内の道路を右往左往していましたが…。