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転居で大家さんから訴えられた話 - U.S.A. -

No.467/2016.11
宇部興産機械(株)/ 岡本 健
画:クロイワ カズ

ミシガン州のアンナーバーに駐在していた時の話です。郊外の戸建て住宅で一家3人が快適に暮らしていたのですが、大家から法外な家賃の値上げを通告され、転居することにしました。新しい家は直ぐに見つかり、引っ越しも終えたのですが、前の家で瑕疵を点検していた大家から、またしても法外な通告を受けました。

「リビングのフローリングに多くの傷が見られる。新しくするので修理費3,000ドルを負担してほしい」

夫婦と娘1人が丁寧に使っていたのでそんな傷をつけた覚えはありません。負担できない旨の返事をしました。すると、ADRで解決したいと言います。これは裁判以前に調停や仲裁で民事の紛争を解決する制度。我々の調停員はケンカ両成敗よろしく、1,500ドルを提案したのですが大家は納得せず、結局、簡易裁判所(スモール・コート)で白黒をつけることになりました。

裁判の日、隣町にある裁判所で、聖書に手を置いて宣誓。厳粛な雰囲気はTVでみる裁判所そのものです。駐在期間は10年を超えるので、英語にはそれなりの自信がありました。でも、ネイティブではないので、拙い話し振りの方が情状酌量を引き出せるのではないかと、当社米人スタッフのアドバイスもあり、覚束ない英語で対応することになりました。原告、被告、双方の陳述が終わり、休憩に入りました。すると、傍聴席に居た人たちが列をなして法廷内に入ってきます。傍聴人だと思っていたのですが、彼らは順番待ちの被告人だったのです。別の判事がテキパキと判決を言い渡していきます。刑事事件もやるのか、足に鎖を着けた人も見かけました。

その後、我々の判決も出ました。2,000ドルの負担です。そのくらいなら、体験・見学料と考えて判決を潔く受け入れました。