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2度の出張で両極端の体験をした話 - GERMANY -

No.478/2017.10
宇部エクシモ(株)/ 横北 昌彦
画:クロイワ カズ

4年前の10月、「Kメッセ」がドイツのデュッセルドルフであり、当社も出展することになりました。これは3年に1度の大規模なプラスチック見本市。当社は初めての出展とあって、大人数で出張です。1週間の会期も順調に進み、最終日。全員で打ち上げの夕食の後、ホテル前のレストランで2次会。大いに気勢を上げました。後はホテルに帰って眠るだけ。「最終日には気を抜くな」という忠告も忘れていい気持ちになっていました。

その時です。背後に人の気配がして、1人の男が店を出ようとしているのを、ホンの一瞬、視線の片隅に捕らえました。上着を着た男が手にも上着を持って…?

ハッと椅子の背に手をやると、そこに掛けておいた私の上着がありません。「おい、待て!」大声で叫ぶと同時にその男を追っかけました。「俺の上着を返せ!」大声で叫びます。こういう時は日本語で十分、声の大きな方が勝ちです。長身の男は上着を捨てて逃げて行きました。財布や航空券の入った上着を危ないところで取り返したのです。

この武勇伝の3年後、昨年のKメッセにも出かけました。このときは市内のホテルが満員で隣町に宿をとりました。会期中は毎日列車通勤です。ある日の朝、何時もの列車が来ません。ドイツ語のアナウンスが理解できずオロオロしていると、「どちらへ行かれるのですか?」と若い男が英語で話しかけてきました。事情を説明すると、今日は電車のホームが変更になったとのこと。丁寧に別のホームに案内してくれました。

3年前の事件とは大違い、ホンモノの「おもてなし」に感激しました。それ以来、日本で外国人が困っているのを見ると、勇を鼓して助けてあげようと心に決めました。が、今のところそのチャンスはありません。