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「翼」第7号:環境安全部だより


環境安全部だより クリーンな電力を宇部興産からみなさんのご家庭へ「厚東川水力発電所」

厚東川水力発電所建屋内に設置された昭和25年製の発電機。宇部興産の卓越した技能者による丁寧な整備で60年を超えて現役で活躍しています。 厚東川水力発電所建屋内に設置された昭和25年製の発電機。宇部興産の卓越した技能者による丁寧な整備で60年を超えて現役で活躍しています。

敷地面積900万平方メートルにもおよぶ宇部地区工場群における安定生産を支えるために、宇部興産では4つの自社発電設備を所有しています。宇部市の市街地からも見える高く伸びた2本の煙突はそれらの中で最大の出力を誇る宇部興産発電所です。煙突から白くたなびくのは無害な水蒸気で、電力と蒸気の供給によって宇部地区事業所並びに、関係会社10社へのエネルギーインフラを担っています。
一方、多くの宇部市民がバスフィッシングやキャンプなどのレクリェーションに訪れる風光明媚な小野湖に隣接して宇部興産の厚東川水力発電所があります。厚東川水力発電所は、山口県の中央に流れる二級河川厚東川の上流側にある厚東川ダムに隣接した水力発電所です。この発電所の歴史は古く、戦後の復興の時代にまでさかのぼります。当時、肥料を製造していた宇部窒素工場は食糧増産の要求を満たすために、硫安の大増産にまい進していました。ところが、硫安の製造に欠くことのできない電力を得るための石炭が十分に確保できず、深刻な電力不足が常態化し、工場は製造がままならない状況に陥ってしまいました。厚東川水力発電所が誕生したのはそんな混乱の時代のことでしたので、当社の電力供給元として、また食糧生産を陰で支えるインフラとして大変に重要な位置付けとなりました。
この水力発電所は運用開始からすでに60年以上が経過していますが、まだまだ現役です。現在は温暖化ガスを放出せずに電気を生み出す再生可能エネルギー創出源の一つとして中国電力へ送電しており、皆さんのご家庭へクリーンな電力をお届けしています。また、中央操作室からの24時間体制の遠隔監視と定期的な巡回パトロールを行っており、先輩諸氏から受け継いだ歴史ある発電所を守り、電力の供給責任を果たすための努力を日夜続けています。

こぼれ話

「翼」紙面で紹介した宇部興産の4つの自社発電設備とは「宇部興産発電所」「宇部興産第二発電所」「ユーエスパワー発電所」そして「厚東川水力発電所」です。ユーエスパワー発電所は「翼」第5号で詳しく紹介していますが、21メガワットの出力を持つ山口県最大のメガソーラー施設です。一方で、宇部興産発電所、宇部興産第二発電所は石炭火力発電所です。火力発電といえば温暖化ガスの排出がしばしば話題となりますが、両発電所では様々な工夫によって環境負荷軽減に努めています。
宇部興産の主力製品の1つであるセメントは1,450度以上の高温で原料を焼いて製造します。この廃熱の有効利用を考え、2010年には宇部セメント工場で発生する排熱を発電所ボイラーの熱源として利用する設備を設置しました。その結果、発電効率は大幅に高まり、省エネルギーセンター主催の平成23年度省エネ大賞「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。
さらに別のボイラーでは2006年より木質バイオマスを燃料に併用しています。空気中の二酸化炭素を吸収して成長した木材は燃料として使用しても大気中の二酸化炭素量に影響を与えず、木質バイオマスの活用は火力発電所における温暖化ガスの排出削減に高い効果があります。ですが、石炭火力発電の主流となっている微粉炭火力方式は細かい粒子にした石炭を燃料として使用し、バイオマス燃料は苦手です。当社はそのようなバイオマス燃料を使いやすくする技術開発を通じ、国内火力発電所で最大級の約10%混燃率で運用しています。
無限の太陽光エネルギーを電気に変えるメガソーラー、歴史と伝統を秘めて静かにたたずむ水力発電、最先端技術を投入した火力発電、3種類の発電方式をラインナップした発電所群を安定運用し、セメントや化学製品だけではなく、電力においても広く社会に貢献できる企業を目指して私たちは努力しています。

担当者から一言

宇部市街地に近い、ひときわ高くそびえる2本のグレーの煙突が宇部興産発電所です。モクモクと白い煙のようなものが出ていてなんだか不安に感じられる方も多いかもしれませんが、あれは煙ではなく、三重に装備された有害物除去装置を通ってクリーンになった水蒸気なのだそうです。しかも石炭が燃えて発生した灰やチリはすべてセメントにリサイクルされ、数千年以上の年月をかけて作り出された貴重な資源をわずかもムダにすることなく活用しているのだとか。
数階建てのビルに匹敵する巨大な有害物除去装置を背負うように装備した発電所が、取材後はとても頼もしく見える気がしました。
(担当:中西 貴之)