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「翼」第7号:地域の顔


地域の顔

宇部好楽協会の皆さん(右から3番目が玉井副会長) 宇部好楽協会の皆さん
(右から3番目が玉井副会長)
会長の俵田忠さん 会長の俵田忠さん

このコーナーでは『地域の顔』として活躍していらっしゃる方々をご紹介します。今回は、【宇部好楽協会】の皆さんにお話を伺います。

-どんな会ですか?

私は副会長の玉井保生です。宇部好楽協会は、昭和21年、俵田寛夫氏(後の宇部興産副社長)らによって設立されました。俵田さんは、筋金入りのクラシックファンで、ご本人も音楽道楽を自称しておられました。第2次世界大戦の空襲で宇部は大きな被害を受けましたが、幸運にも渡辺翁記念会館が戦災を免れたので、市民の心を癒すには、音楽の力を借りるのが最短かつ最善だったのでしょうね。来年、設立70周年を迎えますが、設立当時と変わらず音楽を愛する皆さんが、当協会の活動を支えてくれています。

-主な活動は?

設立当時から続けているのがレコードコンサートです。当初は、渡辺翁記念会館で本物のコンサートを行う前の勉強会として行われていました。実際にコンサートで演奏される曲のレコードを聞いて俵田さんが解説するわけです。因みに、今は、私が解説しています(笑)。他には、コンサートの招致ですね。直近では、来年の1月23日にピアニスト辻井伸行さんのショパンリサイタルが行われます。辻井さんは、渡辺翁記念会館の音響がとても気に入っておられるそうです。

-一番の想い出は?

私が、入会して間もない昭和31年、アメリカの世界的オーケストラ、ロサンゼルス・フィルハーモニーが渡辺翁記念会館にやって来ました。パワフルでありながら繊細な素晴らしい演奏に驚き、感動したことを覚えています。当時、宇部市にはホテルらしいものが無く、国鉄の寝台車を10両ほど借りて、小郡駅(現在の新山口駅)の引込み線に停め、ホテル代わりに使うという荒業で乗り切ったことも良い想い出ですね。

-今後の活動はいかがですか?

俵田さんは、「作曲家・演奏家・聴衆は【一期一会】の糸で結ばれている。」と仰っていました。宇部には渡辺翁記念会館という世界に誇れるコンサートホールがあります。これまでもこのホールでは数多くの素晴らしい【一期一会】がありました。我々の活動が、新しい【一期一会】をつくる一助になれるよう、努めてまいりたいと思います。

こぼれ話

多くの演奏家に愛されてきた渡辺翁記念会館 多くの演奏家に愛されてきた
渡辺翁記念会館

今回お話を伺った玉井副会長は、中学時代からクラシックひと筋60年という生粋のクラシックファン。若い頃から「心地よい響き」を求めて国内の著名なホールはもちろん、ウィーン、ザウツブルグ、シカゴなど海外にも足を伸ばしてクラシックを楽しんできたそうです。そんな玉井副会長が最も「心地よい響き」として愛するホールは、やっぱり渡辺翁記念会館。大きな箱には無い繊細な響きが魅力的とのこと。2012年にピアニストの辻井伸行さんが渡辺翁記念会館で公演された際、「素晴しいホールですね」と褒めてもらえた時には、自分のことのように嬉しかったとか。「渡辺翁記念会館は市民の宝。これからも守り続けていきたいですね」と仰っていました。

担当者から一言

近頃、音楽愛好家を中心にアナログレコードがブームとなっています。CDやハイレゾなど「音が良い」デジタル音源が多数存在する中で、アナログ盤の「柔らかい暖か味のある音」に癒されるというのが背景のようです。玉井副会長によると、渡辺翁記念会館は、この「柔らかい暖か味のある音」が存分に感じられるホールなのだそうです。クラシックの演奏会を主目的として建築家・村野藤吾によって設計され、多くの著名な演奏家に愛されてきた歴史を持つこのホール。今となっては、古臭いところも多々ありますが、アナログな雰囲気というか空気感がデジタルに疲れた現代人の癒しになりそうです。お疲れの方は、ぜひお試しあれ。
(担当:吉永 龍男)