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「翼」第9号:「宇部線」その歴史に迫る!


市民に親しまれる公共交通「宇部線」その歴史に迫る!

「乗り鉄」の玉田です。
一昨年、開業100周年を迎えた「宇部線」。
長い歴史の中で、変わりゆく宇部を見てきました。改めて、そんな「宇部線」の歴史を振り返ってみましょう。

宇部線の歴史

明治43年 国有鉄道 宇部駅を開設
明治44年 宇部軽便鉄道株式会社創立
大正 3年 宇部軽便鉄道営業開始。宇部~宇部新川間(元、西宇部~宇部)
大正10年 宇部鉄道株式会社と改称
大正14年 阿知須~新山口(元、本阿知須~小郡)が開通し、ほぼ現在の路線となる
昭和 2年 宇部電気鉄道株式会社創立
昭和16年 宇部鉄道と宇部電気鉄道が合併。新しく宇部鉄道株式会社となる
昭和18年 宇部鉄道株式会社を鉄道省が買収。宇部東線の名称になる(宇部西線は現在の小野田線)
昭和23年 宇部線に改称。宇部新川駅(元、宇部駅)駅舎新築落成
大正時代の祐策さん 大正時代の祐策さん
(1)宇部軽便鉄道(大正3年) (1)宇部軽便鉄道(大正3年)

(1)ワシが発起人となって作った宇部軽便鉄道じゃ。
最初は宇部新川-宇部間が開通したんじゃが、それまで馬車で1時間かかっとったのが、わずか23分で行けるようになって、みんな喜んでくれたもんじゃ。

(2)宇部新川駅(昭和30年代) (2)宇部新川駅(昭和30年代)

(2)昭和30年代の宇部新川駅じゃ。この頃は、宇部駅と言うとった。駅前の噴水がええ雰囲気じゃろ。

(3)国鉄時代(昭和50年頃) (3)国鉄時代(昭和50年頃)

(3)国鉄時代じゃな。チョコレート色の40系電車も今となってはレトロな雰囲気でええのお。

(4)JR移行後(昭和62年~) (4)JR移行後(昭和62年~)

(4)皆さんにも馴染み深いヤツじゃな。新広島色の105系は今でも人気らしいぞ。

(5)現在(平成21年~) (5)現在(平成21年~)

(5)現在の姿。最近は乗客が激減しとるらしい。環境のためにも、もっと利用してほしいもんじゃ。

こぼれ話

-利用者減少に歯止めをかけるために-

ローカル線のご多分に漏れずJR宇部線でも利用者の減少傾向が続いています。自家用車の普及、利便性の悪さ等さまざまな理由がありますし、そもそも「時代の流れ」と言えばそれまでかもしれませんが、祐策翁が礎を築き、常に宇部市の発展と共にあった宇部線が衰退していくのは、多くの宇部市民が望んでいないことでもあります。そこで、宇部市では、開業からちょうど100周年となった2014年、「JR宇部線利用促進協議会」なるものを立ち上げました。協議会では、「はなびーる電車」など企画列車の運行や「鉄道展」といった利用啓発も企画しながら、本来の目的である利用促進に向けて「市民と宇部線との距離を縮める施策」について真剣な議論がされています。

高校生ボランティアと近隣住民による駅舎の清掃 高校生ボランティアと近隣住民による
駅舎の清掃

-無人駅クリーン作戦-

東新川、琴芝、居能、岩鼻の4つの無人駅では、近隣住民や高校生ボランティアによって、定期的に清掃活動が実施されています。「無人駅クリーン作戦」と題したこの活動は、無人化により無機質になった駅を利用者たちの手で清掃することで、駅に温もりを取り戻すと同時に利用者たちに宇部線を身近に感じてもらうことを目的としています。各駅とも毎回たくさんの高校生が参加し、掃き掃除や窓拭きなどを楽しそうにやっているのが印象的です。

はなびーる電車専用観覧席から見える大迫力の花火 はなびーる電車専用観覧席から見える
大迫力の花火

-はなびーる電車-

毎年、7月の最終土曜日に行われる宇部市花火大会に合わせて運行される臨時貸切列車。新山口駅を発車し、花火開始にちょうど良い時間に最寄り駅である琴芝駅に到着します。その名のとおりビールや地酒、おつまみなどが用意され、ローカル線ならではの景色を眺めながら移動。花火の時は専用観覧スペースで大迫力の花火を楽しめます。年々人気が高まっていて、ここ数年はチケットが早期完売しているそうです。

担当者から一言

宇部軽便鉄道が開通した大正3年当時、宇部新川駅から幹線である山陽本線の宇部駅(当時は山陽鉄道西宇部駅)に出るには、人力車や馬車を使って1時間から1時間半もかかっていたそうです。僅か7kmに早くて1時間。今では想像もつきません。それが、宇部軽便鉄道の開通により、たったの23分で行けるようになりました。しかも安い運賃で。荷物を運ぶのも、人が移動するのも劇的に効率的になったわけです。当時の新聞によると、人々がこぞって鉄道を利用した様子が報じられています。
時が経ち、宇部市でも自動車が普及し、道路が整備されました。現在、自家用車を使ってこの7kmを移動すると、15分程度でしょうか。宇部線だと多少早くなりますが、駅までの移動や待ち時間など考えると、明らかに自家用車の方が便利で効率的ということになります。つまり、人々は、列車より効率的な乗り物ができたから、そっちを使っているということです。宇部線の利用者が減少するのは、自然なことですね。
ただ、21世紀も10年以上が経過し、我々の身の回りでは「多様化」が進んでいます。どんな時でも、「移動する=効率的な自家用車を使う」という固定概念から少し離れて、時には、非効率な列車での移動を楽しんでみるという選択もアリだと思います。効率的な世の中から開放され、案外リフレッシュにもなりますよ。
(担当:吉永 龍男)