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「翼」第11号:環境安全部だより


環境安全部だより ITでプラントの安全操業と高品質な生産を実現

UBEの工場群は一見、昔と比べても大きな変化はないように見えますが、実は安全に高品質な製品を製造するために、外からは見えない部分にITやビッグデータ解析が導入され、一部の工場は先端技術を取り入れたハイテクプラントに生まれ変わっています。
一例として宇部ケミカル工場の「異常予知検知システム」があります。このシステムではプラントに設置した多数のセンサーをネットワークで接続し、常に温度や、酸素濃度などのデータを収集して解析しています。その結果を理論上の理想的な値と比較し、数値がはずれれば、それをトラブルの予兆と判断し計器室の画面に警告を出す仕組みになっています。運転員はその内容を確認し、異常を未然に防ぐよう対処すると共に、万が一の事態に迅速に対応できるよう備えます。これは熟練運転員が経験の中で身につけた異常の予兆に関する「気付き」をデータに基づいてコンピューターが判断できるようにしたシステムです。
宇部地区はUBEの主要生産拠点であり、さまざまな化学物質、製品、電力などを生産しています。このような巨大工場は一度事故が起きるとその損害は大きなものとなり、近隣住民の皆さんへもご迷惑をおかけすることとなります。UBEの工場群が安定操業を続けているのは多くの熟練人材が要所ごとに配置され、事故につながるわずかな予兆も見逃すことなく対処しているためですが、世代交代や生産拠点の世界展開を考えると何らかの対策が必要でした。
プラントではDCSと呼ばれる、バルブなどの装置をネットワークで接続し、監視を行うシステムが導入されています。計器室に並ぶ多くの画面には様々な情報が表示されていますが、経験が浅い運転員は同時には2~3種類程度のデータしか把握することができません。ところが、熟練運転員は10種類程度のデータを同時に見て一瞬で状況判断をしています。このようなUBEの資産ともいえる卓越した技能は、経験と感覚に基づいた暗黙知であるため、マニュアルとして文章化することが困難で、熟練人材から中堅・若手人材への伝承が難しいのが現実です。
そのような課題を解決できるこのシステムを活用し、将来的には世界各国のUBEのプラントを接続することによって、海外プラントのデータを日本からリアルタイムに確認することや、稼働情報を経営層がいつでも把握できるようにすることを目指し、さらなる安全と高品質を追求し続けます。

計器室の監視画面。縦の白いラインより左側が実際にセンサーから送られてきた温度や圧力のデータ。それをもとにITで解析し、右側の将来の変化を予測します。

プラントを集中監視する計器室。中央の65インチ大型モニターは通常はプラントの稼働状況が示されていますが、将来の異常を予測すると自動的に画面が切り替わり、この先いつ、どのような異常が想定されるかが表示されます。運転員はそれを確認し事故を未然に防ぐよう迅速に対処します。